森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

サンアゼリア メジューエワ ピアノ・リサイタル

イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル


イメージ 1
 葦
 神秘のバリケード
 百合の花ひらく

ラモー:タンブーラン


ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第八番 ハ短調「悲愴」

ウェーバー:舞踏への勧誘

 ノクターン 「遺作」
 幻想即興曲 op.66
 ワルツ op.64-1 「子犬のワルツ」
 ワルツ op.64-2

ドビュッシー:月の光




メジューエワで聴く初めてのクープラン。珠玉の小品たち。
メジューエワは昔子供向けに小品集を沢山録音していたのですが、可愛らしい小曲でも大作のように生真面目に取り組んでいて好感は持てるけどやや重苦しい感じもしたものです。
「生真面目」という印象だけでスポイルされてしまうクープランの創意に満ちたファンタジーをどの様に表現してくれるか、楽しみと不安の入り混じった気持ちで聴き始めたのですが、メジューエワブリリアントな音で、軽やかではないけど優美な音楽を聴かせてくれました。
いつものメジューエワよりも緩急が強く、音色が内向的な品の良さから開放的な明るさに変化しているように聴こえました。
会場のせいだけではないように思います。

とは言え、トルコ行進曲の物凄く凝ったアーティキュレーションはいつものメジューエワ流で、右手は速いけど単音の連なりであることから一音一音を完全にコントロールして雄弁です。

次の「悲愴」ではメジューエワの変化が明らかになりました。
開始の打鍵が爆裂しました。曲を知っていて、メジューエワの動きから出のタイミングがわかるというのに、大音量に驚いてしまいました。
メジューエワの演奏にメトネル以外では初めて聴く音です。
第2楽章も遠くを見るようなロマンではなく今ここに構造的に純音楽を再現したように聞こえます。
ベートーヴェン全集を完成した後シューベルト・リスト・ドビュッシーに取り組んで、また戻ってきたベートーヴェンは彼女に違って見えたのかもしれません。
とにかく打鍵の強弱が激しく、明るい音で外へ放射する音楽は以前の表現豊かであっても内向的な音楽よりもずっと大きなものに感じます。

ウェーバーも8月に聴いた時よりも起伏に富んでいて、精緻さを保ちながらも柄の大きな表現になっています。
ところで、例の休止で拍手が起こってしまったのですが、メジューエワは右手を上げて制止の合図・・
私はコンサートで演奏家が観客を制止するところを始めて見ました。会場からも笑いが漏れ、これ以後演奏家と観客が近づいた気がするのは幸運な副産物でした。
それにしても、地方の市民センターのコンサートで「舞踏への勧誘」はどうなんだろう。私はいつも気が気でなくて、演奏に集中し辛いほどです。

後半のショパンもさらに磨かれています。
以前はやや丹精すぎて地味に聞こえた「幻想即興曲」や「英雄ポロネーズ」も豪快さを加えています。

ドビュッシーラヴェルもいつもの精妙な美しさに強さと煌めきを増していました。

イメージ 3
全てのニュアンスに求心力があり充実した音楽体験ができる幸福なコンサートだったけど、それに加えてニューヴァージョンとでも呼びたいほど今日のメジューエワは情熱的で、今後の楽しみも増しました。



[2014-1-25]


ところでサンアゼリア前のコンコースは「ニッポン全国鍋合戦」なるイベントの設営中。43の団体が鍋料理を供するのだそうです。
 和光の冬の風物詩「鍋合戦」は、地元伝来の鍋料理、わが家自慢の鍋料理、創作の鍋料理が一堂に会し、 来場者の投票により、その年の「鍋奉行」を選出する、日本最大級の鍋料理コンテストです。
 ぜひ、ご近所、ご家族お揃いで熱々の鍋を食べに来てください。
うーん、行ってみたい。
イメージ 2