森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ザルツブルク音楽祭2012  『ラ・ボエーム』

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合 唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
指 揮:ダニエレ・ガッティ
演 出:ダミアーノ・ミキエレット
出 演:
 ロドルフォ=ピョートル・ベチャワ
 マルチェッロ=マッシモ・カヴァレッティ
 ムゼッタ=ニーノ・マチャイゼ

2012-8-1 ザルツブルク祝祭大劇場

NHKの放送を録画視聴)



時を現代に移した演出ですが色どりが大変美しく目を楽しませてくれます。
パリというよりイタリアンな感じがします。

「火を借りに来た」のがタバコの火であるなど、ちょっとした読み替えがありますがご愛嬌の範囲です。

とにかくオーケストラの音色が美しく、ガッティの音楽作りも入念かつしなやかな表情付けで歌とオーケストラが高め合ってオペラを盛り上げます。
ウィーン・フィルプッチーニはとにかく美しい。これが聴けただけでも満足が得られるほどです。

この日のネトレプコは私が聴いた中では最も素晴らしく、今彼女は絶頂期にあるのではないかと感じさせます。
どんな姿勢でも、どんな音程でも強引さや粗さがなく密度の高い美しさを保ち続ける声を時に柔らかく、時に朗々と響かせ続けるネトレプコは本当に素晴らしいと思います。

これは第二幕でマチャイゼが登場するとより明らかになります。
マチャイゼは以前何かの役でネトレプコのカバーに入ったそうで、それを知らずに見たヴェローナでの『ロミオとジュリエット』でも何となくネト子に似ているしなかなか実力高いなあと思っていたのです。
ところが『私が街を歩けば』では一部ミミと声が被るのですが、ネトレプコの圧倒的な凄さを見せつける事になってしまい、マチャイゼには気の毒な結果になってしまいました。

ネトレプコはこの声で複雑な大人の心理描写や貴族らしい立ち居振る舞いができれば稀代のディーヴァになったのにと、少し残念にさえ思います。

かなり身体が大きくなってバカンスにでも行っていたのか真っ黒なので熊さんのようで、ちょっとガッカリ。


ベチャワのロドルフォも想像していたより合っていて、少し知的な感じと繊細さも織り交ぜて好演でした。
上品で洗練された歌い方なので胸のすくような勢いはありませんでしたが、演劇的には良いロドルフォです。


マルチェッロのマッシモ・カヴァレッティも気持ちよく聴いていられる良いバリトンで、ロドルフォ・ミミの引き立て役という以上のしっかりした存在感がありました。


ただ、第一幕の引っ込みでベチャワのハイCがひっくり返ったのでペケ。
あれさえなければ・・


[2012-11-11]