森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

モンテヴェルディ:歌劇 『オルフェオ』 ミラノ・スカラ座2009



古楽器:コンチェルト・イタリアーノ
指 揮:リナルド・アレッサンドリーニ
演 出:ロバート・ウィルソン
出 演:
 オルフェオ=ゲオルク・ニール
 エウリディーチェ/音楽の女神/エコー=ロベルタ・インヴェルニッツィ
 使者&希望の女神=サラ・ミンガルド
 渡し守カロンテ=ルイージ・デ・ドナート
 地獄の王プルトーネ=ジョヴァンニ・バッティスタ・パローディ
 地獄の女王プロセルピーナ=ラファエッラ・ミラネージ
 オルフェオの父アポロ=フリオ・ザナージ

2009年9月21&23日、ミラノ・スカラ座におけるライヴ収録
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史上6番目とか7番目と言われる最初期のオペラ作品ですね。
モンテヴェルディ最初のオペラ作品でもあり今日でも頻繁に演奏される演目です。

スカラ座でこれをやるとは以外です。
リュートやテオルボのかそけき音と、詩人のようにささやく歌手達によって演じられる典雅な歌劇。
それが派手なイタリアオペラの殿堂で演じられるとは・・

その成果は・・・
心が洗われるような珠玉の上演になっていました。

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舞台は大変簡素で、空気感を大切にしているようです。
















その中での演技もまるでお能のように様式化され簡素でゆっくりとした動きです。
バロック最初期の作品らしく素朴な楽器音で鳴る単純な和声、それに重なる典雅で美しい調べや庶民的で生命感溢れるリズムで魅力たっぷりです。



どこまでがスカラ座管弦楽団でどこからがコンチェルト・イタリアーノかわかりませんが、古楽器らしい膨らみを持った奏法で気持ちに心地よいリズムをつけてくれます。


歌はたいへん装飾的であるにもかかわらず技巧が前に出る事がない落ち着いたものです。

特にオルフェオのゲオルク・ニールは暖かく柔らかい声で、この半神の主人公の心理を切々と訴えます。
ほとんど表情を変えることのないまるで道化のような演技はゆっくりとした動きと相まってオルフェオの喜怒哀楽をほんの少しの所作で表現し得ています。

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オルフェオがエウリディーチェの死を知らされた時、全ての音が止み動作も止まった中で彼の驚愕と絶望の表情のみに意識が集中し、次に短調のコンティヌオが鳴り出した時に深い悲しみに引きずり込まれるのです。











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単純な響きと和声、それに緩慢な所作。
それらが静謐な空間で響き合い、心の波紋が美しい模様を作り出していました。

全く気がゆるむこと無く、集中して味わうことができました。












[2012-3-25]