森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

リゴレット・イン・マントヴァ

ライヴ・フィルム・プロジェクト2010

出演:
ジルダ=ユーリア・ノヴィコヴァ
マントヴァ公爵=ヴィットリオ・グリゴーロ
マッダレーナ=ニーノ・スルグラジェ

管弦楽:イタリア国立放送交響楽団
合 唱:ソリスティ・カントーり合唱団
指 揮:ズービン・メータ
制 作:アンドレア・アンデルマン


世界ライブ中継されました。
第一幕 2010年9月4日 PM.8:30
第一場 パラッツォ・テ 巨人の間・カヴァルリの間
第二場 ヴォルト・スクーロ小路
パラッツォ・テ 秘密の花園
第二幕 2010年9月5日 PM.2:00
パラッツォ・ドゥカーレ
第三幕 2010年9月5日 PM.11:30
スパラフチレのとりで

オーケストラ演奏はマントヴァのビビエーナ劇場で行われました。


リゴレットドミンゴが演じているのですが、元々ガッシリした声だとはいえ怨念たっぷりのリゴレットはキツいようです。

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無理した反動か、得意のはずの高音域も伸びが無くなっています。


演技はしっかりしているのだけど、身体の緩みが痛々しくもあります。

先日の震災後の来日コンサートよりもコンディションが悪そうです。





ジルダ役のユーリア・ノヴィコヴァという人を知りませんでしたが、ジルダに相応しい容姿を持った人です。

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容姿の通りの歌もマイク収録ならではの繊細さで、時に最高音域が厳しいけど表現意欲が感じられる好ましい歌唱です。

”麗しい御名”は十分楽しめました。

しかし、劇場ではか細い声となり観客を納得させるのは難しいかも知れません。






マントヴァ公爵のヴィットリオ・グリゴーロ。

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張りのある声でアクセントたっぷりの演技に歌唱です。

色男というより、若気の至りを体現しています。

もう少し歌を音楽的に聴かせる事ができたら素晴らしいテノールになるのではないでしょうか。







一番安心できたのはライモンディです。

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悪そうです。怖いです。

歌も演技もオーバーアクションだけど、説得力があります。


妹役のニーノ・スルグラジェも役柄にピッタリで、この女性なら標的を誘い込むことも出来るだろうと思えます。

そういう役柄に合った容貌・姿というものをオペラは後回しにしがちですが、このプロダクションはこの面では高く評価できます。



ライブということもあってか、せっかく美しい城や風景の中での撮影なのに、寄りの映像が多いのが残念です。

手持ちカメラで歌手を追うのに手一杯で、美しい構図を準備出来ていない印象です。

まるでバラエティー番組の街歩きロケのよう。



私はそもそもこの《リゴレット》を高校生の時初めて劇場で見てから、好きだと思ったことが一回もないのです。

マントヴァ公爵とリゴレットへ報いが下されず、無垢の娘に向いてしまうところに気が滅入ってしまいます。

このプログラムではドミンゴの辛さと狭苦しい映像が相俟って気の滅入り方もいや増したという気分です。


[2011-7-10]