森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ゲオルギュー スカラ座の 《椿姫》

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ヴェルディ 歌劇  《椿姫》

合 唱:ミラノ・スカラ座合唱団
バレエ:ミラノ・スカラ座バレエ
出 演:
ジョルジョ・ジェルモン=ロベルト・フロンターリ
2007年7月1,4,7日







翌年METでの《ラ・ボエーム》と同じ、ゲオルギューとヴァルガスのコンビです。

似たようなメロドラマなので既視感にとらわれそうだと思いきや、ゲオルギューはさすがに、ミミとヴィオレッタを全く異なる女性として演じています。

顔も声も表情豊かでさすがと思わせますが、「凄い」「巧い」とは感じるのだけどもう一つ「優美」を感じさせてくれたら完璧だと思うのですが。
ちょっと贅沢かもしれませんが。


ラモン・ヴァルガスは声も歌も素敵なのだけどそれはあくまで「歌」としてであって、人間の「言葉」としては、訴えかけが弱いと感じざるを得ません。

演技もモヤモヤと相手の反応を待っているような印象があり、育ちの良い坊ちゃんがどうしたらわからないという風です。

パーティでヴィオレッタを侮辱するシーンも、怨念がこもっておらず子供が癇癪を起こしたようです。

肥満を改善して、怒りと苦悩を表現できるようになれば素晴らしいと思うのですが。



フロンターリは不器用でぶっきら棒なお父さんにピッタリです。
高圧的だが誠実。名誉と思いやりを兼ね備えている。
そんな実際に居そうな自分を整理しきれていない父親像に、フロンターリの個性は良く合っていると思います。

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ヴィオレッタに厳しい要求をしに来たが、真意を知り思いやりを見せる。

蔑んでいるわけではなく、本当にすまない、という気持ちが表れています。







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バカモーン、お前なんか息子じゃない。

ボンヤリしつつも癇癪を起こしてしまったラモンくん、いやアルフレードを打ち据える父の鉄拳。

このオペラには悪役がいません。








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ゲオルギューがMETライブビューイングの 《ラ・ボエーム》 で語っていたとおり、病人が朗々とアリアを歌うジレンマ、それをどう解決したのかが見所です。

弱々しさを強く表現する、という言葉が成立するのかどうか・・・ そんな歌を聴かせてくれます。

私は デセイの歌唱も一つの素晴らしい回答だと思うのですが。



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演出は奇を衒わず豪華で美麗で、オペラを堪能した気になれます。

ザルツブルクネトレプコみたいなものは、実験ミュージカルの様で別の楽しみになってしまいますが、これは観客が望んだままの《椿姫》を提供してくれています。







マゼールを、私は苦手にしています。
音楽が優美で精緻ではあるけど、どこか窮屈な感じを受けてしまうのです。

やはりそのままで、始めは歌も合唱もマゼールの棒に全く合っていないのにキビキビと進めてしまい、ハラハラすることこの上なしです。

彼の演奏する交響曲と同様、美しいことは認めますが。


しかし、このブルーレイがどうして新品で1000円なんだろう?


[2011-6-25]