ドニゼッティ 歌劇 《連隊の娘》 デセイ&フローレス
ドニゼッティ 歌劇 《連隊の娘》
合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団
指 揮:マルコ・アルミリアート
演 出:ローラン・ペリー
出 演:
マリー=ナタリー・デセイ
トニオ=ファン・ディエゴ・フローレス
ベルケンフィールド公爵夫人=フェリシティ・パルマー
シュルピス軍曹=アレッサンドロ・コルベリ
公爵夫人の執事=ドナルド・マクスウェル
2008年4月26日 メトロポリタン歌劇場
(METライブビューイング)
(NHKの放送を録画視聴)
幼い頃フランス軍の連隊に拾われ育て上げられたマリーは連隊の軍人全員を父と呼び慕っている。
マリーはある災難をキッカケに村の若者トニオと相思相愛の仲となり、トニオはマリーと結婚する権利を得るために入隊する。
ところが、同じ村で足止めを食っていたベルケンフィールド公爵夫人が連隊長シュルピスと話すうち、マリーが公爵夫人の生き別れた姪であると判明し、公爵夫人はマリーを引き取って行ってしまう。
かくしてマリーとトニオは離れ離れになってしまうが・・・
ダイアログ(台詞)のあるオペラ・ブッファです。
ドニゼッティの良い面が溢れ返ったとても陽気で親しみやすいオペラです。
ナタリー・デセイはとにかく良く動きます。
コミカルな動きと表情はオーバーアクションの舞台コメディのようです。
ジャンプしたり寝っ転がっり、兵士たちに頭の上に持ち上げられたりしながらドニゼッティの超絶技巧コロラトゥーラを力強く転がします。
この人の声はどんな音域でも音量でも豊かさと強さがありますね。
ただ私はちょっと、あまりにコミカルな演技がその歌唱力や知的な容貌とかけ離れていて、クラスのマドンナが漫才の汚れ役を演じたような、痛々しくて「それ、君がしなくていいよ」と言いたくなる感覚を覚えました。
《夢遊病の女》の深刻な演技の次に彼女を見たのがこれだったかも知れません。
ファン・ディエゴ・フローレスはあまりコミカルな演技に乗ってはいなくて、優等生が捨てきれない感じです
。
しかしさすがにその歌唱は素晴らしく、歌いまわしは流麗だし声質は若々しくて情熱的だし、ハイCなどは全く問題にならずハイDesも朗々と出していました。
ある意味もっと破綻寸前といった感じのほうが凄いと思える、そんな贅沢な感想を持ってしまいます。
ハイDesの瞬間
ハイDesの直後
トニオのモノローグに感激した、とういより
「やったね、ファン・ディエゴ」
と行ってるように見えてしまいます。
作品としては十分に楽しく、音楽はバックミュージックと効果音の役割をしっかりとになっています。
ダイアログがあるのでミュージカルのように楽しめます。
登場人物がみな大変な善意の人であり、気分の沈み込んだ描写もコミカルなので飽きてしまうかと思いきや、快活さに引き込まれて時間が短く感じる舞台です。
プロダクションとして多くの人の物凄い労力が注がれていて、それが観客にとって肩肘張らずに楽しめる極上のエンターテイメントに仕上がっているのは素晴らしいものですね。
[2011-3-10]