森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

《ランメルモールのルチア》 - ネトレプコ

歌劇《ルチア》 - ドニゼッティ

出 演:
ルチア  =アンナ・ネトレプコ
エドガルド=ピョートル・ベチャーラ
エンリーコ=マリウス・キーチェン
合 唱: メトロポリタン歌劇場合唱団
管弦楽メトロポリタン歌劇場管弦楽団
指 揮: マルコ・アルミリアート
演 出: メアリー・ジマーマン
2009年2月7日 メトロポリタン歌劇場
METライブビューイング収録

NHKの放送を録画視聴


あらすじは典型的な悲恋ものです。
よくロミオトジュリエットと対比されるようです。
イメージ 1敵同士の家系に属するエドガルドとルチアの二人が愛し合ってしまいます。

イメージ 2家長である兄にそれが許せるはずはなく。
しかも、政略結婚を押しつけます。

かたくなに拒むルチアでしたが、様々な計略に捕らわれ政略結婚に同意してしまいます。

イメージ 3しかし、婚礼の後、初夜の寝室で

イメージ 4悲劇が起きます・・・

イメージ 5ルチアの亡霊に導かれてエドガルド絶命。


エドガルド役は本来はローランド・ビリャソンがキャスティングされていました。
しかし、病気降板でベチャーラが登板しました。
もちろん世間では、ネトレプコの突然の妊娠・結婚にビリャソンがショックを受け引きこもってしまったからだ、と言われています(ビリャソン君にはちゃんと奥さんがいるのですが・・・)。

ベチャーラとビリャソンは全く個性が違いますが、歌の勢いではビリャソンが、甘さではベチャーラに歩があるように思います。

しかし、このドニゼッティではベチャーラの声がやや埋もれがちです。
歌唱そのものは甘く情熱的で、テクニック的にも申し分なく、エドガルドをよく体現していると思うのですが。

そしてネトレプコは声のパワーは十分、というより出産前よりもパワーが増しているようにさえ感じられます。
太った・・というのも寄与しているかもしれませんが。
ただ、ハイDなどの高音の輝きと裏腹に通常域では音程がふらついて感じるところは以前のままです。
ドニゼッティの迫力のあるアリアは鳥肌が立つような歌唱ですが、もう少し繊細な表情が巧みに出せればそれが倍増すると思うのですが。

しかし、このむごたらしいストーリーがとても身につまされ、心に突き刺さってきます。
つまるところ、封建社会における女性売買の話です。
まともな心境で批評的に観ているのは、ちょっと無理でした。


イメージ 6ヨーロッパの紳士たちのアイドルだったネト子も一児の母・・・

もうすこし、エレガンスを身につけると演技に風格が出ると思うのですが、まだ庶民的というか田舎風というか、貴族の演技に無理を感じます。


[2010-7-4]