森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

プッチーニ 歌劇《つばめ》(ラ・ロンディーネ) MET

プッチーニ 歌劇《つばめ》(ラ・ロンディーネ) 

合 唱:メトロポリタン歌劇場合唱団 
指 揮:マルコ・アルミリアート 
演 出 :ニコラス・ジョエル 
出 演:
ルッジェーロ=ロベルト・アラーニャ 
リゼット=リゼット・オロペーサ 
プルニエ=マリウーシュ・ブレンチュー 
ランバルド=サミュエル・レイミー 

2009年1月10日 メトロポリタン歌劇場 

NHKの放送を録画視聴(METライブビューイングと同一ソース)


プッチーニなのに珍しい《つばめ》(ラ・ロンディーネ) です。
作曲は1917年。第一次世界大戦で初演がなかなか出来なかったようです。
そして楽しいオペラなのにメトでは1936年以来の上演となっています。
イメージ 1

話の方は、一目惚れして一緒に暮らして別れる、というお決まりのパターンです。
ですが、邪魔が入ったり病気になったり死んだりしない、どうしてこんな台本を物凄い労力を割いてオペラにするのだろうと不思議に思うような単純な内容です。
実はこれは始め、コミックとして作曲を始めたのでそうです。なるほど。

音楽はかなり円熟していて、優美で派手で、とても聴き映えのするメロディーとオーケストレーションです。

さて、この日ゲオルギューはかなり具合が悪いらしく、冒頭でメトの総裁ピーター・ゲルブ氏が挨拶に立ち「本人のたっての希望で代役を立てずに挑むので暖かく見守って欲しい」とのこと。
少し心配に始まります。
イメージ 6
しかし始まってみれば、揚々とした歌唱で何ら問題を感じませんでした。
少しセリフじみた崩しが多かったと感じましたが、具合が悪いためなのかわかりません。








今回がメトの初舞台という、マリウーシュ・ブレンチューがとても甘い声で気持ちのいい歌を聴かせてくれました。
しばらく男声は彼がメインで、後になってからアラーニャが登場するのですが、ブレンチューの後では歌いまわしこそ巧みなものの、声に艶が無く少し疑問に感じてしまいました。

そしてメトの研修生であり、少し前に代役でスザンナをこなしたと言うリゼット・オロペーザ(なんと、役と同名!)。
彼女が、やや単調ではあるものの実に快活で気持ちの良い歌唱を聴かせてくれます。演技はキュートで魅力的です。

イメージ 3
スザンナもリゼットもメイド。
本人が言うようにあっけらかんとしたメイド役がぴったりです。








イメージ 2
この若手二人が、館の客とメイドで相思相愛、と言う関係なのですが、本当に若さあふれる魅力的な掛け合いを随所で披露してくれました。

この二人のパートにコミックの名残が残っています。





イメージ 4
第二幕の四重唱は合唱も加えて熱狂的な盛り上がり方をする曲です。歌手にとってかなりの難曲らしいのですが、誰かが(恐らくブレンチュー)調和を破る素っ頓狂な声を上げていたのがかなり気になりました。







アラーニャは第三幕にはもう声が枯れてしまい、歌唱が苦しそうでした。
良い人柄な感じが役柄にはとても合っていたのですが。
イメージ 5

若々しい声で一世を風靡したアラーニャですが、誰もが認める大ソプラノとの夫婦共演は実は少し重荷なのかも知れません。



うーん・・
アラーニャさん夫婦だから?
でも、別居中だとか・・


衣装や装置は普通に作曲当時(1917年)の再現したもので、特に第1幕は無声映画に着色したような、とても素敵な舞台でした。
私は実験的・挑戦的な演出よりもこういう文芸的な演出の方が、やはり好きです。

ライブビューイングの収録のときはアラーニャは視線を見合わせるような演技を心がけたり、ゲオルギューはノドを温存したり、気を使うそうです。

バッドエンドとはいえ、気持ちがウキウキするような楽しいオペラを奇を衒わない演出で楽しく観ることが出きました。

[2010-3-17]