森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ロッシーニ 歌劇『エルミオーネ』


エルミオーネ=ソーニャ・ガナッシ(S)
ピッロ=グレゴリー・クンデ(T)
オレステ=アントニーノ・シラグーザ(T)
アンドローマカ=マリアンナ・ピッツォラート(Ms)
ピラーデ=フェルディナント・フォン・ボートマー(T)
フェニーチョ=ニコラ・ウリヴィエーリ(Bs)
演出=ダニエレ・アバド
指揮=ロベルト・アバド
プラハ室内合唱団
ボローニャ市立歌劇場管弦楽団

2008年8月、ペーザロ・ロッシーニ・オペラ・フェスティヴァル

指揮者はクラウディオ・アバドの甥、演出はクラウディオの息子さんです。

トロイア戦争を舞台に、捕虜となったトロイアの王妃アンドローマカ。
そのアンドローマカに心惹かれる勝者側の王ピッロ。
ピッロの婚約者エルミオーネはピッロの心変わりを嘆く。
エルミオーネに思いを寄せるギリシアからの使者オレステ。
そのオレステはアンドローマカの息子アスティアナッテをトロイア王の嫡子として亡き者にしようとする。
アンドローマカは息子を救うためピッロを受け入れる決心をするが・・

という複雑な五角関係が描かれます。

嫉妬と恨みの連鎖が延々と続き最後は流血で終わるという、およそロッシーニらしからぬストーリーです。

しかし音楽の方はこれでもかと言うほど快活なギャロップがつづきます。
こんな陰惨な場面でなんで?という程陽気な音楽が流れてきますね。
この時代にはドニゼッティもしかり、モーツァルトだってその気がありますね。

その分ずっと雑事を忘れてお気楽に楽しんでいられるわけです。この時代、現代に通じる悩ましさがあったのかもしれませんね。

イメージ 1
イメージ 2

衣装と舞台装置はギリシア劇の雰囲気感じさせつつスタイリッシュなモダン感覚で、殺風景になりがちなギリシア劇でありながら目を楽しませるものになっています。

指揮もオケも堅実に楽しめます。

アンドローマカ役のピッツォラートはメゾにしてはきらびやかな声で楽しめます。
タイトルロールのガナッシは堂に入った感じでところどころ「さすが」と思う技も披露して立派です。

面白いのはオレステ役のシラグーザとピッロ役のクンデとの対比です。
同じくベルカントテノールですが、シラグーザがあくまで軽やかで華麗なのに対し、クンデはシラグーザ程ではないけど華麗な声も、密度感のあるちょっと含んで深い声も出せて使い分けているのが不思議な感じもあり、巧い思いました。

全体的に十分楽しめる内容でした。

イメージ 3(こんなむごたらしいシーンでも、音楽は陽気で快活)


[2009-9-19]