ネマニャ・ラドゥロヴィチ バイオリン・リサイタル
ネマニャ・ラドゥロヴィチ バイオリン・リサイタル
実は私はブラームスの曲が持つ哀愁が少々あざといものに感じられて少し苦手なのですが、彼の弾くこのブラームスは軽快な速度で、音色はあくまで明るく官能的で、構成感よりも旋律の曲線美を重視した美しいブラームスで、大変魅せられました。
《旋律・リズム・和声》
しかし、随分前からそこに4つ目を加えて
《旋律・リズム・和声・音色》
音楽好きの中には音色を軽視する人が多いのも事実です。
しかし例えば、服飾において型だけが重視され服地の色や質感が考慮されないとしたらどうしょう?
しかし例えば、服飾において型だけが重視され服地の色や質感が考慮されないとしたらどうしょう?
美しい楽器の音色はただのロングトーンでさえ人を魅了できるものです。そしてこの4番目の要素は、3要素以上に身に付けるのが難しい技術なのです。
このラドゥロヴィチは4要素を全て同等に駆使していて、しかも美音の持ち主が陥りがちな、これ見よがしで恣意的な(勝手気ままな)演奏と言う印象がありません。
ラドゥロヴィチはラクリンのような彫りの深さはなくて、クラシックの世界では軽んじられるだろうけれど、決して一本負けとは感じられません。
ピアノもソロ楽器と共に音楽を体現しなければならないのに、伴奏とかサポートなどと呼ばれるのは釈然としません。
私はピアノパートと呼びたいです。
私はピアノパートと呼びたいです。
そういう意味でこのロール・ファヴル・カーンは繊細さと力強さ、色合いと奥行きを持った素晴らしいピアノ演奏でした。
その上でバイオリンとの呼吸もぴったり合っています。
何度かヤン・パネンカを思い出す瞬間がありましたが、彼以上にソロで聴いてみたいと感じました
その上でバイオリンとの呼吸もぴったり合っています。
何度かヤン・パネンカを思い出す瞬間がありましたが、彼以上にソロで聴いてみたいと感じました
ブロッホ:ニーグン
ブロッホの《ニーグン》は初めて聴く曲でした。ブロッホがこんなに激しく深刻な曲を書いていたことに驚きました。ところどころ、『いつものブロッホ節』が見られましたが、情熱を厳しく追い込んでいくような迫力は一貫していました。
これは名曲といえるのではないでしょうか。
これはラクリンでも聴いてみたいという、ちょっと贅沢な願望を持ちました。
[2009-6-7]