森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

Newton別冊 『量子論』 楽しめる一般向けガイド

イメージ 1Newton別冊 『量子論
出版社:株式会社 ニュートンプレス

『波動性と粒子性』や『状態の共存』など基本中の基本から始まって、無の揺らぎ、超ひも理論多世界解釈パラレルワールド)まで、量子論を俯瞰します。

とにかく深く広い内容をイラスト主体の170ページ余りで解説するので、雰囲気を味わうためのものと言えます。
物理専攻には当然ですが、一般向けの物理解説書が好きな人にも平易すぎる内容だと思われます。

しかし、高校生以下やSF好きの社会人にはとてもいい内容ではないでしょうか。
「物理学は数学で、数学は哲学である」などといわれるので、このようにイラストを多用して散文調で説明されるのは楽しいことです。
特に若い人たちは、これで宇宙の神秘性に感動して理系に目覚めてくれるといいと思います。

私はこのような非専門向けの解説書は中学~高校時にたくさん読んで(Newtonも創刊時から購読していました)、実際に学問として本物の数式をかじった際には随分感動したものですが、大学では数学漬けだったので、復習の意味でとても楽しめました。

『無』をイラストで示すなどムチャな試みもやっています。これに挑むなら芸術的表現にしたら良かったのにと思います。
またサイコロを偶然性の象徴として取り上げるのにはかなり違和感があります。理系的センスでは立方体の運動にすぎませんから、偶然性なんて感じませんよね?

全体に、SFを読むための下準備、または物理学の現状と方向性をおぼろげに感じるための一般向けガイド、です。

気軽に楽しめることは間違いありません。


[2009-5-24]