森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

バティアシュビリ ショスタコーヴィチ Vn協奏曲第一番

ショスタコーヴィチ バイオリン協奏曲第一番 イ短調 作品77

2009/1/10 NHKホール
指揮:デイヴィッド・ジンマン David Zinman
オーケストラ:NHK交響楽団
バイオリン:リサ・バティアシュビリ Lisa Batiashvili
NHK BS2 2009/2/1放映

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第一楽章 ノクターン
NHK交響楽団から、重々しい音が鳴り出し驚きます。
バイオリンは意味深い予兆を感じさせながら開始します。
わかりやすい主題が繰り返され、力強さと繊細さが交錯しながら高い推進力で音楽が進んでゆきます。

第二楽章 スケルツォ
バティアシュビリはバイオリンでは音が痩せて荒れがちなフォルテの付点やスタッカートを難なく打ち進めていきます。
ダブルストップも厚いハーモニーを聴かせます。

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第三楽章 パッサカリア
重々しい出だしに対してバイオリンは悲しげに開始します。メランコリックな旋律を「泣く」バイオリンが深く力強く弾き進み、クライマックスでは朗々と歌い上げます。
以後第四楽章まで、深刻で屈折したような心理を描いてゆきます。

第四楽章 バーレクス
スケルツォ以上に躍動感豊かで、低く高く、そして速く、まさに火を噴くような曲であり演奏でした。

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バティアシュビリの演奏は全体に非常に力感に満ち、音質を損なうことを恐れず、魂の躍動と叫びを強く訴えることに力を入れたものだと感じました。
音程が非常に正確で、音色は厚く安定感があり、アーティキュレーションも明確で、指の強いバイオリニストだと感じました。

ショスタコーヴィチが屈折した形で曲に封じ込めたであろう悲哀と怒りと困惑が、感動的に表現されていました。
曲としても有名な交響曲第五番より遥かに優れた書法と内容を持っていると思います。
ちょっと、マイブームになりそうです。

ジンマンは例のベートーベンでのお騒がせの雰囲気は無く、真剣で実直な演奏でした。

私はNHK交響楽団にあまり肯定的でないのですが、この演奏は立派だったと思います。


[2009-2-22]