森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

シェルブールの雨傘 手練手管に快くはまる

イメージ 11964年フランス
監督:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:
傘屋の娘 ジュヌヴィエーヴ=カトリーヌ・ドヌーブ(歌唱ダニエル・リカーリ)
修理工 ギイ=ニーノ・カステルヌオーヴォ(歌唱ジョゼ・バステル)

今日は映画。
往年の名作のデジタルリマスターということで、急に思い立って行って来ました。

シェルブールの雨傘

シンプルなストーリーですが、文芸・芸術は「何を語るか」ではなく「どう語るか」です。
見事に作者の術中にはまってしまいました。

この映画には素のセリフはありません。全てにフシがついています。
それもオペラのレチタティーヴォのような感じでなく、ちゃんとしたリズムと旋律になっています。だから、動きや間にも全てリズムがあります。

構成は3部に分かれていて間に暗転がありますので、まるでオペラです。
しかし、オペラやブロードウェイミュージカルのように声自体の魅力に訴え、張り上げるような歌い方をする場面は一回もありません。じつにやわらかく、シャンソンに通じる親密さで歌っていきます。

ジャズ調の音楽で通す中、要所要所で例の名旋律が鳴ります。
それがスイッチとなって思わず涙が出てしまうのです。

やはり名作であるとの思いを新たにしました。

終演後は『Fin』の表示も無くいきなり館内が明るくなってしまったので、涙顔を整える暇がありませんでした。
これから行く方はご注意を・・

デジタルリマスターですが、元の映像は覚えていませんが、色がどぎつくなったり階調が無くなったりすることのない、良いものだったと思います。
味のある古さも残されています。


シネセゾン渋谷は初めてでした。
ふかふかの座席は快適でした。
座席の段差が少なく心配しましたが、スクリーンが高く前の頭が気になることはありませんでした。


[2009-2-11]