森羅観照記

つれづれなるままに・・。当世ではそれを「チラシの裏にでも書いとけ」と呼ぶそう。

ヤノフスキの 《英雄》

ヤノフスキの 《英雄》
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指 揮:マレク・ヤノフスキ
管弦楽:ベルリン放送交響楽団

2011年10月12日 NHKホール

NHKの放送を録画視聴





ヤノフスキは木管楽器を増強しているのだそうです。
その目的は声部の役割を明確にすること。
だから常に増強しているのではなく、場面によって適切な本数を使用するのだとか。

そうした前口上を聞いてから演奏に接してみて感じたことは、やはり今まで聴いてきた英雄のバランスを維持している、ということです。

その違いは全体の音色が違うというよりも、耳が自然に聴きに行く楽器がが違って来る、と行った感覚です。

かと言って決して奇を衒ったりあざとい感じは一切無く、旋律線やハーモニーは今まで知っていた通りだけど、確かに聴こえていて知っていた声部がちゃんとそれぞれの音楽性をもって機能している事が感覚的に入ってくる、という聴こえ方です。

楽器の特性が当時とは違うのだから、スコアから想像される音と現実が違うとき、楽器の本数や配置を指揮者の裁量に委ねる事を私は問題ないと思います。

しかしこの演奏で特筆すべきところはそこではありません。

ヤノフスキは非常にキビキビした音楽運びで、ぶっきら棒と言ってもいいほどのマルカートとブツ切りと言えるほどの休止を常用します。

それが全体としては全く乱暴に聴こえずむしろ音楽が活き活きと呼吸し躍動するのを楽しむことができます。

私の耳には各楽器の力量は決して高くは無いという印象で、彼らにこの快速はかなりムリがあるのではと感じられるのですが、団員にヤノフスキの音楽性が浸透した上で自発的に演奏しているようで、決して急いた感じにはならず本来こうであるべきという説得力のある推進力を感じさせます。

速くてハキハキしているけど重厚感も威厳もある、まさにナポレオンの進軍を思い起こさせるような演奏です。

決してオーソドックスとは言えないけど、私がこれまでに聴いた何10もの英雄の中でも筆頭に置くことができる素晴らしい演奏でした。


[2012-1-4]